トリートメントは無意味?傷む?

世の中には色々な考えの美容師がいて、それぞれの方が自分の理論や技術に信念を持って仕事をしてると思います。

そして時に自分の信念を貫くが故に時に真逆の考えを極端に否定してしまう、いつの時代も美容師とはそのような傾向があると常々感じております。

本日は『トリートメント』という物について私なりの考えをお話させていただければと思います。

まず、私はトリートメントという物の有効性をとても感じながら施術している美容師の1人です。

髪の毛は『死滅細胞』と呼ばれ、生えてきてる時点で死んでいる細胞ですので、自ら代謝を行い回復していく事が出来ません。

ですので、なるべく傷める事なく施術を行う事が大切になります。
その為にトリートメントの力を借りながら施術する事により、同じ施術を行ったとしても髪へのダメージを少なくする事が出来ます。

お薬の力を調節したらトリートメントなんていらないと言う方もいますが、薬剤の浸透力を高めたり効果を高める事が出来るトリートメントを使えば薬剤の放置時間を短くする事が出来るので、それだけでもダメージを抑える事が出来ます。

次に傷んでしまった髪の毛を治せるか。
正確には治す事はできません。

だから無意味かと言うとそういう訳ではありません。
トリートメントの役割は『修復』ではなく『補修』なのです。

健康な髪の毛はCMCと呼ばれる栄養分で満たされ表面はキューティクルで覆われてます。
それにより髪の毛にとって適切な11~14%の水分量が保たれ、適切な油分も保たれてます。
ダメージによりそのバランスが崩れると髪の毛の綻びは広がり、放っておくとよりダメージが加速していきます。

そのダメージの加速を防ぐ為にトリートメントで健康な髪の毛から失われた成分を『擬似的に』補う事が必要なのです。

現代のトリートメントは以前に比べると定着性がとても高まっている物もあるので、持ちもかなり良くなりましたがそれでも落ちてしまう事もありますので、定期的に施術する必要がありますし、落ちてしまう分を家庭で補う為にもホームケアが大切になってきます。

トリートメントで髪の毛を元通りに出来る訳では無いので無意味と言う方がいるのかと思いますが施術によるダメージの予防、そして今以上に傷ませないように、そして艶やかで扱いやすい髪を作る為にはトリートメントはとても有効です。

次はトリートメントは傷むのか?
答えは『使い方を誤れば傷む事もある』です。

パーマやカラー等の影響でキューティクルが毛羽立ってしまったり髪の毛の組織が緩んでしまう事があります。
それを治すのに酸性のお薬やポリフェノールを使う事があるのですが、濃度を間違えると髪の毛が引き締まり過ぎて傷みます。

数年前から流行っていた酸熱トリートメント、上手に使えば扱いやすい髪の毛を作れる物ではあるのですが、過剰に行ってしまったり施術工程で使うアイロンの温度が髪の毛のダメージレベルと合わなかったら傷む事もありますし、その後のパーマやカラーに悪影響が出る事もあります。

そしてこちらも数年前より流行ってる髪質改善トリートメント、やり方は様々だとは思いますが、お店によってはトリートメントとうたっていても実は内容が縮毛矯正の様な事もあります。
縮毛矯正系の髪質改善トリートメントは髪の毛の形状を整えるので仕上がりはとても綺麗に見えますが施術自体の負担は避けられないので、綺麗になるからとペース配分を見誤って施術すると気がつくととても傷んでしまいます。(151eの髪質改善系は縮毛矯正系ではございません)

このような事を書くと怖いと思う方もいると思いますが、どの分野のお薬もメリットとデメリットは紙一重で、扱う人間がその成分を理解して使う事が何より大切で、上手に使うとメリットは絶大です。

酸やポリフェノールで髪の毛を適度に引き締める事により毛先の収まりが良くなるばかりかカラーやパーマの持ちも良くなります。

酸熱トリートメントや髪質改善トリートメントも、きちんと使いこなせば通常のトリートメントでは手に負えない髪の毛を綺麗に扱いやすくする事が可能ですし、メリットはとても大きいです。
特に癖毛の方は恩恵が大きいと思います。
ただ、効果が大きい分髪の毛の状態や施術のペース配分をきちんと考える事が大事ですし、美容師の力量が問われると思います。

オーソドックスな皆様がイメージするようなトリートメントで傷む事は基本的に無いと思っていただいて良いと思いますが、効果が高いサロントリートメントやトリートメントと名乗っているけど、実は他の技術や薬剤を応用した技術は、髪の毛の状態や美容師の力量によって傷む事はある、ただ、上手に付き合えばとても効果が高い物があるというのが現状だと思います。

色々な考え方の美容師がいると思いますが、目指すところは『お客様に喜んでもらう』これは同じだと思います。

自分の考えとは違う事を否定してしまう気持ちもわからなくはないですが、それは可能性を狭めてしまうだけなので、なるべく柔らかい頭と正しい知識を持ち、柔軟に対応して良い事は受け入れていく事が大切だと思います。

私自身も色々な分野に目を向けてお客様にとって有益になる事は積極的に学び取り入れていきたいと考えております。

私達美容師はこだわりを持って仕事をしている分、自分とは違う事は否定してしまう傾向が強いと感じますが、それぞれの分野の施術でお客様を幸せにしているはずです。

お互いを否定し合うのではなく、良いところを認め合い成長していける美容業界であれば良いなと強く思う今日この頃です。

インターネットが発達し、様々な情報が溢れていてお客様自身も何を信じて良いのかわからない事が多いかと思いますが、私自身がお答えできる事はなるべくわかりやすくお客様にお伝えできればと思いますし、そして柔軟な頭で日々勉強しながら新しい事もお伝えさせていただければと思います。

トリートメントは上手に付き合うとダメージの予防、施術の効果を向上、見た目の艶やかさや手触り、そして日々の扱いやすさの向上にとても効果的なメニューですので、トリートメントで皆様の髪の毛の健康の向上のお手伝いをさせていただけましたら幸いです。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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